地球丸フォトエッセイ

「地球はとっても丸い」プロジェクトのメンバーがお届けする、世界各地からのフォトエッセイです。
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第5回 夢うつつ……
連載「アラビア半島の印象」
文・写真:郷らむなほみ(オンタリオ州・カナダ)
夢うつつ……

 一旦現地を離れてしまうと、リヤドでの暮らしは夢か、そうでなければ幻だったのかもと思えてくる。いや、住んでいた時でさえ、サウジアラビアという国は、夢と現実の区別がつけにくいところだった。

 祈りへの呼びかけ、アザーンで目覚める早朝、人々はモスクへと急ぐ。女は外出を制限され、幽閉生活。夫に連れられて外出できたとしても、黒装束をまとわねばならない。何もかにもが、生まれ育った日本という国とあまりにも違う。そんな日常から離れられ、楽しみであるはずの沙漠の旅でさえ、危険との背中合わせ。緊張の連続で、夢なら早く醒めて欲しいと、いつも私は思い続けていたのだ。

 私たちが行った沙漠の旅で、最も印象的だったのは、浜辺に捨てられていた小型飛行機のカテリーナ号との遭遇だった。紅海のアカバ湾に面した、人影の全くない海。それはそれは美しいラグーンが続く、波打ち際の轍(わだち)をたどった末、行き着いた浜辺にいたプロペラ機だ。北米の実業家が、自家用飛行機で世界旅行中に不時着したという場所に、傷ついた機体が半世紀近くも置き去りにされている。

 朽ちた翼が風に揺れ、ギィギィと、小さく弱く、そして切なく悲鳴をあげる。二度と持ち主のところに戻ることもなく、誰からも忘れられた哀れなカテリーナ。
 私たちの旅が夢でなかったことを確かめに、またいつか訪れたい。だが、あの場所には近い将来、橋が架けられるのだと聞いた。鉄くずのようなカテリーナはきっと、撤去されてしまうのだろう。

 敬虔なイスラム教の国サウジから、快楽の園であるエジプトのビーチリゾートへと向かうハラーム(禁断)な橋は、夢と現実を結ぶ。どちらが夢でどちらが現実か、それは旅人次第だが……。

≪郷らむなほみ (ごうはむなおみ)/プロフィール≫ フリーランスライターで転勤族の妻。4年8ヵ月に及ぶサウジアラビア暮らしは、オフロードの虜になった夫と共に、アラビア半島探検赴任になった。一番感動した旅は、カテリーナ号を探し当てたもの。遺跡でも沙漠でもない範疇に、我ながら呆れる。オタワの最近の気温はマイナス20度で、アラビア半島との体験温度差は80度ほど。扱うモノが砂から雪に変わったにも関わらず、今もスコップ作業に忙しい毎日を送っている。

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